研究


NOx(窒素酸化物)のアンモニアを用いた選択触媒還元(NH3-SCR)
定置用ボイラーの排出ガスには、光化学スモッグや酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOx)が含まれます。日本では現在、大型のボイラーから排出されるガスに含まれるNOxは、脱硝装置によって取り除かれています。脱硝装置で利用される現行の触媒は、NOxの除去に必要な反応温度が高く、排ガス処理システムの自由な設計の妨げとなっていました。
当研究室では企業と共同で、低温で高い活性を示す脱硝触媒の開発の研究をしてきました。これまでの脱硝触媒は、300℃以上で作用しますが、100~150℃でも高い性能を有することが目標です。低い反応温度では、燃焼排ガスに含まれる水分の影響が非常に大きく、水分の存在が触媒活性を下げる要因となっていました。
私たちは、既に五酸化バナジウム(V2O5)をバルクとして脱硝触媒に用いることを世界で初めて報告しています。更なる活性の向上に向けた研究では、V2O5結晶の金属骨格にタングステンを置換することにより、新規触媒を開発しています。タングステンに着目した理由は、タングステンはバナジウムと元素サイズが同程度であり、かつ金属酸素八面体構造により3次元的にV2O5を結びつけることにより、構造を安定化することが期待されるからです。開発した触媒は、反応温度100~150℃、かつ水分が存在する条件でも高い活性を示しました。
この触媒を利用する排ガスシステムの開発は、既にNH3-SCRが導入されている日本を含む先進国においては、触媒の低コスト化およびNOx処理の省エネルギー化に繋がります。また、大気汚染が深刻化している排ガス処理システムが整備されてない発展途上国においても、今あるボイラーに対して、低温でのNH3-SCRシステムを簡便に後付けできる可能性があります。世界的に見ると大気汚染は重要かつ喫緊の環境問題となっているため、本研究の技術は大気環境の向上に大きく貢献できる可能性があります。この研究例の様に,低温脱硝触媒の開発の研究を実施しています.